助産師さんのえんむすびコラム

【赤ちゃんの五感はおなかの中から始まっている?!】

ふだんは、妊婦さんや産後のママ、赤ちゃんと過ごしている、なお助産師です。

時々、こども達向けの「いのちのおはなし会」や小中学生や保護者向けに性教育のお話をする機会があります。

その中では、おなかの中の赤ちゃんの成長や生まれてくる力についてもお伝えしています。

はじめて聴いてくださる多くの方は「赤ちゃんっておなかの中で、そんなこともしているのですね！」と驚かれています。

おなかの中の赤ちゃんは栄養や酸素をへその緒からもらいながら、羊水のなかで過ごしています。

あくびをしたり、舌を出したり、しかめ面や微笑、目や口を開けたり閉じたり、手足を曲げたり伸ばしたりもしているのですよ。

こんな風に、赤ちゃん自身の力を発揮しながら成長・発達している姿を想像すると微笑ましく感じませんか?!

赤ちゃんのもつ力って、本当にすごいなぁと日々感じています。

そしてですね、この記事を読んでいるあなたも、おなかの中で過ごした時期があり、たくさんのすばらしい力を発揮し、誕生し、成長・発達して、今、こうして過ごしているのです。

「自分ってすごい！」と大承認して、優しくギュッと包みこんであげてくださいね。

では、ここから赤ちゃんに対する‘ミニ知識’として、‘おなかの中の赤ちゃんの五感’について一緒に見ていきたいと思います♪

五感は、視覚・聴覚・触覚・嗅覚・味覚をいいます。

ひとつずつ確認してみましょう。

☆視覚☆

赤ちゃんは妊娠18週くらいから光を感じはじめます。妊婦さんのおなかに弱い光をあてると、赤ちゃんは光の方によりそってきて眼球を頻繁に動かす様子も見られるようです。

妊娠後期になるとまぶたを開閉することも多くなるようなので、妊婦健診時のエコーのときに、そんな赤ちゃんの様子に遭遇することもあるかもしれませんね。

産まれた後の視力は約0.01～0.02あります。生後1ヶ月くらいすると、凝視したり、ゆっくりと追視できるようになりますので、ゆったりした口調で目を合わせながら、赤ちゃんに話かけてみてくださいね。

☆聴覚☆

妊娠20週くらいから音を感じはじめます。研究結果では、声のなかでも特に妊婦さんの低い周波数が赤ちゃんには伝わりやすいこともわかっています。子宮内で妊婦さんや周りの声や音についても学習し記憶していくので、誕生直後の赤ちゃんは声を聞き分けることができているのです。

そう思うと、日常的におなかの赤ちゃんと会話を楽しみたくなりますね。妊婦さんだけではなく、家族やまわりの方々の声も、ぜひ赤ちゃんに届けてあげてくださいね。

うまれた後におなかの中で聴いていた大好きなお母さんや家族の声をそばに聞くことができること、きっと赤ちゃんは楽しみにしているでしょうね。

☆触覚☆

五感のなかでも一番発達が早いのは触覚です。妊娠初期には赤ちゃんが自分のからだや子宮の壁にふれる行動が見られています。羊水に包まれる感覚や冷たさ・温かさも感じることができたり、皮膚感覚もすでに学習が始まっているのですよ。

☆嗅覚☆

赤ちゃんは子宮の中の羊水の匂いを感じ取っており、妊娠30週くらいには嗅覚は完成すると言われています。

生後すぐの赤ちゃんの口元にお母さんの乳首を近づけると、口を開けて乳首を加えて母乳を飲むことができるのはにおいをかぎ分けている証拠の１つですね。羊水や母乳、母親の匂いを嗅ぎかけることができる赤ちゃん、すごいですよね。

☆味覚☆

妊娠7～8週位で味を感じる味蕾ができはじめ、妊娠20週位には感覚が完成すると言われています。赤ちゃんは羊水を飲んで、自分を包んでいる羊水をきれいにしています。

羊水の味は、妊婦さんが食べたものが関係していることもわかっています。おなかの中での味覚は、うまれた後の赤ちゃんの味覚にもつながるようです。妊娠中から偏りなくバランスよく＆楽しい食事を心掛けることは、妊婦さん自身のからだ作りになるだけではなく、赤ちゃんの食育にもつながっていくのですね。

赤ちゃんはおなかの中にいるときから、五感を育みながら過ごしていることがわかりましたね。

妊婦さんやご家族の方は、妊娠中から優しくおなかに触れたり、赤ちゃんに話しかけたりしながら、できる限りゆったりと穏やかで落ち着いた気持ちでお過ごしくださいね。

【参考文献】

1） Newsweek日本版　0歳からの教育　発達編　心と体、成長の秘密　2018年3月22日

2） 触楽入門　

3） ヒトの発達の謎を解く　明和政子　ちくま新書

4） 胎児は知っている母親のこころ